ヒンディー語を学ぶ必要性はない?英語大国インドの現地語を学ぶ意義とは?

ヒンディー語

本日は、「ヒンディー語を学ぶ必要性はない?英語大国インドの現地語を学ぶ意義とは?」というタイトルで、私の意見を書きます。

このブログを初めて訪れた人のために、簡単に自己紹介をします。

・大阪大学外国語学部ヒンディー語専攻卒業
・インドのデリーに一年留学していた
・就職は外資系コンサルティング(インドと関係なし)
・転職はITスタートアップ(会社としてはインドと関わっているが、私は関わりなし)
・YouTubeで「日本人にインド文化やヒンディー語を教えるチャンネル」「インド人にヒンディー語で日本の文化や日本語を教えるチャンネル」の2つを運営している。

 

私が日本人に「ヒンディー語を話せるよ!」と言って、よくある2つの質問は

「なんでそんなマイナーな言語を勉強したの?」
「インド人ってヒンディー語話すのに、ヒンディー語を話す必要性はあるの?

です。。。笑

 

ヒンディー語は、インド北部で話されている言語です。(南インドではほぼ通じません)
そして、インド全土では英語が広く用いられています。
「英語話せれば十分でしょ」と考え、ヒンディー語を勉強する気のないインド駐在員の方はたくさんいます。

 

このような事情から、ヒンディー語は軽視されがちな言語です。

 

私自身、実際にヒンディー語を学習し、現在は駐在員やその奥様にヒンディー語を教えています。この過程で感じた、「ヒンディー語を学ぶ必要性」について今日は述べていきたいと思います。

 

 

インドではどの言語が話されているの?

インドでは、数多くの言語が話されています。
こちらが、インドの言語分布図です。

インドの言語分布図
インドの言語分布図

例えば、ヒンディー語とPunjabi語は、似ているので、なんとなくの意思疎通はできます。
逆に、ヒンディー語とTamil語(一番下)はかなり違うので、意思疎通はできません。

北インドの人は、母語が違っても、なんとなくヒンディー語が話せるので、北インドではヒンディー語ができれば生きていけます。

しかし、南インドの人はヒンディー語を話す人は少ないので、たとえヒンディー語を知っている人でも、英語か現地語(タミル語など)の習得が必要になります。

 

インド人にとっての「英語」とは何か?

「インド=英語大国」と考えている人は多いと思います。
巷では、「インドで英語留学」というものが、大学生の興味を引き付けています。

では、実際、インド人にとって英語はどんなものなのでしょうか?
私は、3つのカテゴリーに分けられると思います。

①【ガチエリート】ヒンディー語など現地語と同等orそれ以上の英語力を持っている
→小学校あたりから都会のハイレベルな学校で英語での授業を受けているため、基本的に英語で物事を考えたり、情報収集をしている人々。きれいなアメリカ英語・イギリス英語を話す人々もいるが、英語訛りの人も多い。

②【普通インテリ】英語も話せるけど、ヒンディー語のほうが得意
→都会や田舎の公立の学校で、ヒンディー語での授業を受けてきたため、英語よりもヒンディー語のほうが得意。この層の人々も英語は普通に話せる。ただし、発音はインドなまり。日本に留学に来るようなインド人でも、この層は多い。

③【非インテリ】英語が全然~あまり話せない
→貧しい家庭や田舎で生まれ育ったため、英語が苦手。ただし、カタコトの英語なら話せる。

 

日本人がヒンディー語を学ぶ必要があるかどうかを考えるときに、「上記のどの層と、どの程度接するのか?」を考える必要があります。

 

ヒンディー語の必要性は、目的により変わる

では、これから「ヒンディー語を学ぶ必要性」について考えますが、
本人の目的により必要性は変わってきます。
ですので、大きく、4つのカテゴリーに分けて述べたいと思います。

1.ビジネス
2.生活
3.ボランティア・NGO活動
4.映画

では、それぞれのカテゴリーにおいて、ヒンディー語の習得が必要になるのかどうか、自分の見解を述べていきます。

 

1.ビジネスの観点

インド人とビジネスで関わる人む受けです。
インド人と仕事をする場合、基本的には上記の①②の人々と関わることになります。
つまり、「英語が話せる人々」です。
この人たちは、仕事で問題なく英語が話せます。ですので、基本的には英語が話せれば問題ないでしょう。

仕事で困るかどうかだけでいうならば、ビジネス業務にヒンディー語は必要ありません。

にもかかわらず、私のヒンディー語の生徒さんの中には沢山の「インド駐在員」の方々がおられます。

彼らがヒンディー語を学ぶ理由は、「インド人と仲良くなるため」です。
もちろん、英語さえ話せば普通のコミュニケーションは取ることができます。
しかし、「インド人の輪の中に入る」「インド人の懐に飛び込む」ためにはヒンディー語が必要だと思います。

例えば、インド人とご飯を食べたりした時、インド人同士はどうしてもヒンディー語を話します。ヒンディー語が分からなければ疎外感を感じてしまいます。このような、「業務以外のコミュニケーション」を通してインド人との距離を縮めるためには、ヒンディー語が必要なのです。

インド人と日本人が一緒に働く場合をみた時に、多くの場合は、「日本人上司とインド人部下」の関係です。日本の厳しいビジネス習慣に、インド人がついていけないことはよくあります。この場合、日本人上司はインド人部下を叱ります。業務的会話の中では、距離が縮まる事柄よりも、距離が離れる事柄の方が多いかもしれません。こうして離れていくインド人の距離を縮めるためには、業務以外の会話が必要になります。そんな時、ヒンディー語があれば効果的です。

 

結論:
ビジネスでは、業務遂行のためにヒンディー語は必要ない。
しかし、業務遂行の基礎となる、インド人との良好な関係を築くためにヒンディー語が必要な場合がある。

 

 

2.生活の観点

インドで生活するのに、ヒンディー語が必要か?これはYESであり、NOです。
英語とボディーランゲージさえできれば、なんとか生活は出来ます。

特に、お金がある人は、「英語が話せるメイド」「英語が話せるドライバー」「エアコンが壊れるなどのトラブルが起きにくい、高級な住宅」を手に入れることができますし、ぼったくられてもムカついたりはしないはずですので、ヒンディー語ができなくても比較的楽に生活できます。

 

お金持ちではない人が、ヒンディー語を話せない場合は、
「頻繁にぼったくられること」と「頻繁なトラブルにより、ストレスを感じること」を覚悟しておいた方がいいでしょう。

 

頻繁にぼったくられる:
ヒンディー語が話せなければ、言い値は高くなります。
これはインドに限らず定価があまりない国ならば普通です。

 

頻繁なトラブルにより、ストレスを感じる:
家で水が出ない、電気が出ないなどのトラブルが起きた時に、ヒンディー語ができないと対処が難しいです。例えば、排水管が詰まってしまって修理が必要な場合、排水管工事の人を呼ぶことになります。しかし、工事の人はほぼ確実に英語を話しません。

このような、「緊急時」に、英語が通じないと、問題が解決しないため、非常に大きなストレスとなります。

想像してみてください。
48度の灼熱の中、エアコンが壊れて、その修理がうまく依頼できない状況を。
まさに地獄です。

そして、このような「トラブル」はインドでは非常に頻繁に起きます。
このトラブルを、できるだけスムーズに解決するには、ヒンディー語ができた方が良いのです。

 

結論:
お金持ちじゃない一般市民がインドで生活するには、ヒンディー語があった方が便利

 

 

3.ボランティア・NGO活動の観点

インドといえば、「貧しい」「かわいそう」というイメージを持っている人は多いと思います。
そんなイメージがインドの全てではありませんが、インドには確かに貧困層が多くいます。

そんな貧困層を救うため、多くのNGO団体が存在します。
日本人の多くも、このようなNGOに関わっています。

このような団体は、「貧困層」へのアプローチをするわけですが、この「貧困層」は教育を受けることができないため英語が話せません。そのため、現地語をマスターしなければ、彼らの考えや希望を聞くことができません。彼らの将来について一緒に考えようにも、会話ができません。

そのため、NGOに関わる方々は、ぜひ、現地語を学んでおくことをお勧めします。個人的には必須だと考えています。

 

結論:
NGO活動などで、貧困層と真摯に向き合うためには、現地語は絶対必要

 

 

4.映画の観点

インドが世界に誇れるものの一つが、インド映画ですよね。
インドに行ったことはないけど、インド映画は好き!という人は多いと思います。

インド映画には、いくつか種類があります。
とくに有名なのがこの3つ。

 

・Bollywood(ボリウッド)
ムンバイ(旧ボンベイ)で作られている映画
→ヒンディー語

・Tollywood(タリウッド)
皆が大好きなバーフバリはこのカテゴリー
→テルグ語
※ただし、ベンガルの映画をTollywoodと表現することもあるため、注意が必要

・Kollywood (コリウッド)
Kodambakkam というタミルナードゥ州のエリアで制作される映画
大スター「ラジニ・カント」が活躍する映画カテゴリー
→タミル語

インドの言語分布図
インドの言語分布図

これらの映画は、インドで大量に制作されていますが、日本に輸入されて日本語字幕がつけられるのは、ごくわずか。より多くの作品を楽しみたいならば、現地語の習得は必須です。(英語字幕のついたDVDを購入することもできますが、オンラインで見るなら英語字幕付きは少ないので現地語習得が必要です。)

また、インド映画に限ったことではないですが、映画に字幕を付けたときに細かいニュアンスが失われてしまうことがあるので、もっと作品を深く知りたい場合は現地語習得は必須です。

 

では、どの現地語を学ぶのがいいのでしょうか?

Bollywood(ボリウッド)が、世界的にも最も有名で制作本数も多いです。
ですので、インド映画をより楽しむために何か言語を学びたいならば、ヒンディー語はおすすめです。しかし、それぞれの映画のテイストが違うので、自分が好きな映画カテゴリーで使用されている言語を学ぶのが一番いいと思います。

 

ちなみに、私はタミル語やテルグ語を学習したことはありません。
ヒンディー語専攻の友達が、タミル語を学習しているので、「タミル語を学習すること」について聞いてみました。


タミルは綴り(フォーマルな話し言葉)と実際の発音(カジュアルな話し言葉)の乖離がはげしい。学ぶ意味はないとは言わないが、インテリ層とのやりとりは北インドよりも英語が多いのではないかと思う。ヒンディーより学習に時間がかかると思いますね。日本語の助詞みたいに、後置詞にたくさん種類があるし、上記の二種類の発音が面倒かと…(by 友人)

 

ということで、結論です。

結論:
インド映画のカテゴリーに特別な好みがなくて、「インド映画をより楽しむために言語を学びたい」ならヒンディー語がおすすめ。特に、日本語字幕がついていない作品も楽しみたいならば、現地語の習得が必須。

 

 

まとめ:自分の目的に応じて、学ぶ言語を決めよう!

 

いかがでしたか?
英語だけで事足りるのか、ヒンディー語を学ぶべきか?ほかの現地語を学ぶべきか?自分の中で答えは見つかりましたか?

言語の学習には、多くの時間が必要です。
それだけ多くの時間をかけるものだからこそ、「何を学習するか?」は慎重に考えるべきです。

この記事が、皆さんのご判断の一助になれば幸いです。

 

人見

・大阪大学ヒンディー語専攻卒業 →1年半インドに留学(その間大学は休学) ・現在外資系コンサルタント1年目