【卒業論文テーマ】थोड़ी の否定的用法について|マニアック文法を深掘り♬

こんにちは!インドYouTuberのマヨです。

私は、大阪大学外国語学部ヒンディー語専攻で学び、卒業しました。
大学4年生の時に卒業論文を書きました。
そのテーマは、「थोड़ी の否定的用法について」です。

これは、辞書や教科書には載っていない用法ですが、
インド人の会話文で頻繁に出てくるものです。

本日は、このマニアックな文法について、説明します。

ほとんどの人には、全く面白くない内容だと思いますが、ヒンディー語学習者は一つの言い回しとして知っておくと便利だと思います。
また、「ヒンディー語専攻の卒業論文って、どんなんやねん?」という疑問を抱いている変人がいたら、この記事が助けになるかなと思いますw

 

そもそもथोड़ीって何?

本題に入る前に、基本的なथोड़ी(原型は थोड़ा)の基本的な用法を説明します。

[形容詞]
1,少しの、わずかの、少量の

例)रात  अब बहुत  ही थोड़ी रह  गयी है ।
(夜はもう少ししか残っていない。)

2,足らない、不足する

 

[副詞]

1,少し、わずかに、いささか

例)तो फिर  इस फिल्म की  कहानी तो थोड़ी  सुनानी ही पडे़गी  ।
(ならば、この映画のストーリーを少し聞かせなければいけないだろう)

※意味/  ヒンディー語=日本語辞書 編:古賀勝郎・高橋明
例文/ コーパス

 

थोड़ीの否定的用法ってどんなもの?

口語では、थोड़ीをनहीं の意味で使う場合があります。

例えば、「यह देश अपना थोड़ी है」という表現が可能です。
थोड़ीを「少し」という意味で訳すと、「この国は、少しだけ自分のものだ」となんだか変な訳になります。

この文章を正しく訳すためには、थोड़ीを「〜ではない」と訳す必要があります。
「この国は自分のものではない」となります。

 

このように、थोड़ीをनहींとして使用することができます。

この用法は、ここ数十年で頻繁に使用され始めたもので、辞書や文法書では殆ど説明がありません。

私自身、大阪大学で2年半ほどヒンディー語を学習してからインドに留学しましたが、このथोड़ीの使い方はインドで初めて耳にしました。だからこそ、疑問に思い、このथोड़ीを卒業論文のテーマとして選択しました。

 

थोड़ी以外にも、言い方がいくつかある。

このथोड़ीの用法を深掘りしていくうちに、थोड़ी以外にも、言い方があることに気がつきました。

⑴ यह देश अपना थोड़ी है

⑵ यह देश अपना थोड़ी न है

⑶ यह देश अपना थोड़े ही है

これら3つは全て、नहींとして使用されていました。

 

थोड़ीとनहींに違いはあるのか?

थोड़ीやその似た表現がनहींの意味で使用されていることは、上述の通りです。
しかし、थोड़ीには、どのような意味・ニュアンスがあるのか?नहींとは異なるのか?これらがわからないと、非ネイティブの我々はいまいち使いこなせません。

ということで、थोड़ीとनहींの違いについて調べました。

調べ方は、
⑴Webサイト等の文章で、थोड़ीの否定的用法を探し、その文脈の前後からथोड़ीの意味考察(100例文程度を和訳・考察した)

⑵映画の中でथोड़ीの否定的用法を探し、その際の話し手の感情や表現を考察

(3)ヒンディー語ネイティブの人にアンケートを取り、थोड़ीを否定辞としてしようする場合の意図やそのニュアウンス等を聞いた

 

थोड़ीは、否定の強調?弱い否定?どっちやねん!

アンケートの結果は、本当に千差万別で、結論を導くのに苦労しました。
大きく2つのニュアンスがあるようです。

⑴否定の強調「そんな事、あるわけが無い」
→当たり前のことなどを否定する際にथोड़ीを用いて、「そんな事、あるわけが無い」というような強い否定を表すことが出来ます。

先ほどの「この国は自分のものではない」という例文も「この国が自分の物なんかじゃないだろう!」といった具合に訳せるわけです。

 

⑵弱い否定
→⑴とは正反対に、弱い否定を表すという意見もありました。
そもそもथोड़ीは、「少し」という意味。
「ゼロでは無いが、少しはある」という含みを持たせることで、やんわりと弱く否定することができるという考え方です。

 

 

(推測)थोड़े हीから派生した。否定の強調

結局、言語問題は、「この説が正しい」と簡単に結論づけられる話ではありません。
そもそも、ヒンディー語は言語としてバラエィーが激しく、地域や時代により大きく変化します。

ただし、研究の中で、一つの仮説が浮かび上がりました。

【仮説】

①थोड़े हीが、「ほんの少しだけ」という少しを強調する形で使用され始めた。(हीは、強調する言葉)
②थोड़े हीが短縮され、थोड़ीが生まれた。
③少しもないという否定の意味のथोड़ी नという言葉も使用されるようになった。
④上述の単語がごっちゃになり、現代では全ての言葉が「否定の強調」のように使用されている

 

こんな感じです。

 

 

ヒンディー語学習者は、「थोड़ी=否定辞」と理解しておけばOK!

 

थोड़ी 、थोड़ी न 、थोड़े ही などいろいろありますが、とりあえず「नहींと同じ否定辞だ」

と思っておけば、大丈夫です。ニュアンスや使い方は、各自、映画や日常会話の中で理解していくといいと思います。

 

こんなマニアックな記事を最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。
これからも、ヒンディー語学習頑張ってみてくださいね!

・大阪大学ヒンディー語専攻卒業 →1年半インドに留学(その間大学は休学) ・現在外資系コンサルタント1年目