インド・チェンナイで舞踊を習う | バラタナーティヤムは楽しい!(小池あゆみ)

こんにちは。
この記事はマヨさんに代わりまして、私小池が書いています。
マヨさんとは大学の同専攻の同級生でした。

小池とマヨさん(宝塚鑑賞後のティータイム)

 

3年間の休学を経て、大学に復学し、現在4年生として在籍しています。

さて、3年間の休学期間中に、私は何度かインドへ渡航しました。
そのなかでも一番記憶に残っているのが、南インドはタミルナードゥ州のチェンナイ、カラークシェートラ・コロニーにある、私設の教室でインド舞踊を習う機会を得たことでした。
日本でずっと習っていたのですが(詳しくは後述します)、渡印ついでに一度現地の先生に習ってみたいと思ったのです。

その舞踊は「バラタナーティヤム」といいまして、寺院にその発祥の起源をもつ伝統舞踊です。(以前の記事もご参照ください。)
伝統舞踊とはいっても、現地では子ども(特に女の子)の習い事としてもポピュラーです。
日本における伝統舞踊が、習い事としてそこまで一般的でないこととは大きく異なります。
また、12月ごろには、世界各国にいるバラタナーティヤムの著名な踊り手が一堂に会し、チェンナイのあらゆるところで舞台が開かれ、観客がたくさん集まります。

クラスには、グループレッスンとマンツーマンレッスンがありました。
当時、グループレッスン1回は600ルピー、マンツーマンは1000ルピーでした。
そのときはちょうど、メインでレッスンを担当されるアッカ(タミル語で「お姉さん」。ダンスの先生に対しても使います)が海外遠征中だったので、代行のラシュミー・アッカが教えてくださることになりました。

 

ラシュミー・アッカ(レッスン場にて)

 

基本の足のステップ(「タッタ・アダヴ」といいます)は8種類あります。
そして、レッスンではそれぞれをファースト・セカンド・サードのスピードで踏んでいくのですが…。
私の日本の先生、マユリ・ユキコ先生は、大人の学習者向けに、そのときどきで必要なアダヴを厳選してやってくださいます。
しかし、さすがは本場。
1から8までのタッタ・アダヴをすべてのスピードで、ぶっ続けに踏まされるのです!(習いたくて行っているのにこの言いようです。いかに意志が薄弱かが分かります。)
子どもでもみんなやるのです。
これは本当にきつい。
しかし、きついのですが慣れていきます。
これだけ徹底的に踏んでいるから、練習量が違うから、こっちの人は皆うまいんだなと、本当にためになりました。

ちなみにアダヴ(意味を持たない足のステップと上半身の動き)には他にも色々あります。アダヴにはそれぞれ名前があり、流派・先生によって異なる場合もありますが、一応主なものを挙げてみます。(各アダヴの代表的なものの動画をリンクさせています。ぜひ見てみてください。)

タッタ・アダヴ
ナッタ・アダヴ
パッラヴァル・アダヴ
クディッタ・メットゥ・アダヴ
ヴィースィ・アダヴ
コールヴァイ・アダヴ
サルッカール・アダヴ

これ以外にもまだまだあります!
ところで、リンク先の動画の「タラング タカティク タカタテキナトン」や「テイヤ テイヒ」といった謎の口三味線が気になりませんか?
これはソルカットゥ(またはボール)という、大体において先生が歌われるバラタナーティヤム独特の歌い方で、これに合わせて踊るのです。

マンツーマンレッスンではまず、「タッタ・アダヴ」の1~8をファースト・セカンド・サードスピードで踏み、そこから様々なアダヴのコンビネーションをひたすら教えてもらっていました。
レッスン場は半屋外で、鏡がなく、かつ初対面の先生と一対一ということで、最初は本当に緊張しました。
ですが、レッスンを受けるうちに慣れていきましたし、アッカのことを本当に尊敬するようになりました。

ひとつ、強烈に頭に残っていることがあります。
「マンディー・サルッカール」という、私の苦手なアダヴを教えてもらっていたときのことです。
マンディー」という、足を外に開き、そのまま最下部まで腰を落とした姿勢で踊るアダヴに、「サルッカール」(「ひきずる」という意味)が組み合わさったアダヴで、途中膝を床について滑らせなくてはいけないパートがあり、絶対痛いだろうと、こわくて仕方なかったのです。
恐怖心から、何度やってもうまく床に膝を滑らせることの出来ない私を見かねて、アッカがレッスン場の外へと出て行きました。
「下手くそだから見捨てられた…?」
思わず絶望しかけましたが、アッカはジップロックの袋を持って戻ってきました。
もう一度、マンディー・サルッカールをやるように言われ、マンディーの姿勢から床に膝をつこうとした瞬間、その着地点にアッカがジップロックを敷いたのです。
私の膝はジップロックの上に乗り、その袋をアッカが引っ張り、私の膝はうまく滑りました。
「なんてアナログなやり方だ!」
ですが、成功体験をつくって、何が何でもできるようにしてやろうという、アッカの熱意が胸にしみました。

実際に本場でレッスンを受けてみて思ったことは、優れた先生が言うことは、その正確な文言は違えども、大体同じだということです。
各アダヴを踊る際に、体の動かし方として気をつけるべきことはもちろん、日常の対人関係や、自身の体を大切にしろということ。
感謝の気持ちを忘れるなということ。
ラシュミー・アッカとマユリ先生(私の日本の先生)がおっしゃることは、本当にほぼ同じだったので、びっくりしてしまいました。

また、「やれと言われたことは、その場で最大限の努力をもってやる」ことが、いかに大切かということもよく分かりました。
例えば、それぞれのアダヴは完璧に踊れたとしても、実際の曲中では、様々なコンビネーションででてくるため、レッスンでいきなり「~アダヴ、~アダヴ、~アダヴの順でやりなさい」と言われることがあります。
ゆっくりのスピードであったり、単独であれば問題なくできても、速くなると組み合わせが頭に入らず、「あとで練習して、次のレッスンまでに完璧にしたらいいや」と思って、その時間真剣に取り組もうとしなかったこともあります。
ですが、それでは、インドまで来て受けているレッスンの時間が無駄になります。
わざわざ教えに来てくださるアッカの時間が無駄になり、自分が支払うレッスン料が無駄になります。
また、ゆっくりなら、あるいは単独ならうまくやれるという条件付きでは、本当にそのアダヴを自分のものにできたとは言えません。
舞台上では、急にどんなトラブルが起こるか、どんな要求があるか分かりません。
前述のようなアッカの真摯さにふれ、プロでもない、一介のバラタナーティヤム好きの自分が、「~が苦手」「~は嫌だ」「次までにちゃんとしよう」と考えるのは、本当に愚かなことだと思ったのです。
むしろ本当の一流の人こそ、無意味に自我を押し通さず、要求されたとおりにやるのだと思います。
体格だって、身長だって、アッカと私はかなり違います。
でも、その場で、手本に何が何でも近づけようと努力する。
頭の中で言い訳をしようとせずに、とりあえず、言われた通りにできるように何度も全力で練習する。
これはバラタナーティヤムを踊るときだけでなく、日常生活においても、私の行動指針となっています。

ラシュミー・アッカと私

 

さて、日本で私にバラタナーティヤムを教えてくださっている、マユリ・ユキコ先生についてご紹介します。

マユリ・ユキコ先生

 

マユリインド舞踊企画」を主催され、神戸・大阪・京都でクラスを開かれています。
先生の語り口は本当に面白く、特にアビナヤ(手や足の動き、表情で物語を伝える、有意味のパート)のご指導は、ためになります。
例えば、以前、目の前に大きなシヴァ神を見るとき、「あまりに大きいので見上げると、腰布のすき間から、股間が見えるから恥ずかしくなるでしょう」とおっしゃられたことがありました。
そのとき、私はせいぜい、インドカレー屋のポスターのシヴァ神を眼前に思い浮かべていたくらいだったので、「本当に、リアルに眼前に見るということはそういうことなんだな」とたまげたのを覚えています。
先生は、喜怒哀楽の表情を貼り付けて踊るのではなく、物語を細部まで現実のものとして、想像して想像して、自分がその世界に入って、そのものを見たり触ったり嗅いだりして得られる表情を大切にされるのです。

 


昨年の研究生発表会より(右:マユリ先生 左:小池)
[写真撮影:Yoshiaki Konishi様(トリミング:小池)]

以上、渡印した当時のことを思い出しつつ、こうしてとりとめもなくブログを書いていて、あらためて思いました。
「バラタナーティヤムは本当に楽しい!」
本当にいいんです、踊ってみたら分かります!!
踊ったら分かるのですが、踊らなくてもこの記事を読んでいただくことで、少しでもこの思いを共有できればと思います。

そして、「バラタナーティヤムって面白そうだな、一度舞台を観てみたいな」と思われた方へ!
10月8日(月・祝)、兵庫県は神戸のメリケンパークで開催される「インディア・メーラー」というイベントに、「マユリインド舞踊企画」が出演します。
「バラタナーティヤム」以外にも、ムービーダンスや、様々なインドの踊りが観られ、毎年盛況のイベントです。
アジアの雑貨や飲食も充実しています!
ぜひ、観にいらしてください!!

 

マヨ
とっても貴重な体験談、ありがとうございました!日本で踊りを習ってる人は誰しも、「本場で習ってみたい」と思いますよね〜。私もバレエを習っていた時は、「フランスでバレエを学びたい」と思っていたのを思い出しました。
現在日本でインド古典舞踊を習っている人で、「本場で習ってみたい」と考えている人は、ぜひ、行動してみてください!この記事が、そんな貴方の希望を後押しするものとなっていれば、幸いです。では、またね!

 

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・大阪大学ヒンディー語専攻卒業 →1年半インドに留学(その間大学は休学) ・現在外資系コンサルタント1年目